精神障がいとつきあいながら自分らしく暮らしていくためには困っていることを整理して、施設やサービスをうまく組み合わせて使ってください。そのための相談窓口は「医療福祉相談室」「サポートセンターる~ぷ」です。
また、お住まいの市が指定する相談支援事業所でも相談できます。

事例 1

Aさんの場合

Aさんは50代の男性です。20代の初めに統合失調症に罹り、3度の長期入院をしました。退院しても病識がないため薬を飲まず、部屋に閉じこもり何もせずに煙草ばかり吸っていました。家族もそんな本人の様子を見かねて何かするように言うと喧嘩になり、3回目の入院では外泊することもなく、気がつけば7年もたっていました。

長期入院のかた対象に福祉ホームB型さつきがオープンしたのを機会に、主治医に勧められて入居しました。入院生活と違って、ここでは一日施設内で過ごすのではなく、自分にあった日中の過ごし場所を見つけ、お金や薬も自分で管理していくことになりました。急に遠くの施設に通うのは自信がなかったので、ほかの利用者と一緒に同じ敷地内にあるデイケアに通うことにしました。服薬、受診についても、さつきやデイケアスタッフの声かけにより飲み忘れも少なくなり、毎日デイケアに通うことで、自分で自分の体調について考えることもできるようになりました。また、さつきの担当職員と毎月のお金のやりくりについて計画を立てました。生活に必要な金額がわかり、自分で自由に使える金額がわかると買い物も楽しんでできるようになりました。

3年後に病院の近くのアパートでひとり暮らしを始めました。昼間はデイケアに通いながら週に1回訪問看護ステーションかとれやの看護師が来てくれ、体調に関する相談にのってくれます。体調を崩した時は前もって主治医に連絡しておいてくれるので短期間の休息入院で済んでいます。それまではとことん悪くなるまで我慢して最後は無理やり入院させられ、結果として長期入院になっていたのです。デイケアのない土日にはサポートセンターる~ぷに登録しているので、散歩ついでに出かけて、お茶を飲んだりスタッフや他のメンバーとおしゃべりをして気分転換しています。また、困った時の相談もる~ぷを使っています。

Aさんの声

薬をきちんと飲んで、気になることや心配なことは一人で抱え込まず、スタッフに相談することで症状も安定し、ひとり暮らしをしています。いつまでも家族に頼っていたらずっと入院していたかもしれません。夕食の宅配弁当も助かっています。

Aさんのご家族の声

ひとり暮らしができるようになって本当に喜んでいます。もう50代なので仕事は本人もあきらめていますが、障がい年金で貯めておいたお金で今の住居を契約できました。その後、私たち夫婦も高齢になり、夫が介護保険を申請したのをきっかけに本人は生活保護を申請しました。いまでは自分の障がい年金と生活保護でやっています。障がい者自立支援法ができ、障がいがあるからと家族だけが抱え込むのではなく、社会全体で生活をサポートしてくれる時代になったと聞きました。ヘルパーさんが週1回来て身の回りのことは手伝ってくれると聞き安心しています。

訪問看護スタッフの声

訪問看護ではAさんが自宅で自分らしい生活ができるようにサポートしたいと考えています。Aさんはいろいろな趣味があって活動的にすごしたいのに、薬を飲む時間が不規則なため、日中ぼんやりしたりふらついたりして困っておられました。薬の服用方法や管理方法について話し合って決め、訪問時に一緒に確認することで、Aさんが思うような生活ができるようになりました。

事例 2

Bさんの場合

Bさんは20代の女性です。高校時代よりクラスメートや周囲の人たちが自分のことを噂しているような感じがして苦しんできました。大学に進学しましたが環境になじめず、家から出られなくなりました。半年自室に閉じこもった結果心配した両親が病院に相談し入院しました。やがて退院することになりましたが、まだ自分の病気についてどのように受け止めていいのかわかりません。学校に行くことをかんがえると、漠然とこわいような気持でした。両親も薬をきちんと飲めるか心配なようでした。そこで退院して生活訓練施設わかくさで生活することになりました。

同じ病気をもつ仲間と生活を共にするなかで、自分の病気や体調についても考えることができるようになりました。日中はデイケアで過ごすことで、人との交流も怖くなくなってきました。いまでは週の半分は学校に通っています。

学校で体験した嫌なことや困ったことはわかくさに持ち帰り、担当スタッフと一緒に考えることで少しずつ対処の力がついてきました。

今では一人暮らしをしながら通学しています。来年は卒業です。家族や主治医と今後のことを相談しています。事務職を希望していますが、障がいをオープンにして働くことも視野にいれてサポートセンターる~ぷの就労訓練の利用を考えているところです。

Bさんの声

退院してそのまま家に戻っていたら、また閉じこもっていたかもしれません。同じ病気の人たちと一緒に生活することで、この病気を受け入れて、つき合っていこうと思えるようになりました。病気のせいで起こるいやな気持をひとりで抱えこまないで、スタッフや仲間に聞いてもらうことで自分らしく前向きになれます。

わかくさスタッフの声

同じ病気を持つ仲間がいる、いつでも相談できるスタッフがいる。まずは安心して生活できることが大切だと思っています。生活するなかで自身の病気のことで悩んだり、他人との交流のなかで対処困難な場面が出てきたりすることもあると思いますが、わたしたちスタッフも共に問題を解決していけたらと思います。

サポートセンターる~ぷ 就労担当スタッフの声

精神障がいを持つかたが仕事をするにあたってはいろいろな選択肢があります。その一つとして「障がいをオープンにする働き方」があります。いままでは障がいのことは隠して、そのことにより職場で過度の緊張が続いたり、薬の服用をやめてしまい再発したりのマイナス面が多々ありました。自分の病気や障がい、服用している薬についてきちんと学び、その上で雇用側の理解を得る働き方をサポートしています。また、他の就労支援機関と連携して、職場実習、就職説明会など現実的な就労支援を提供します。